千葉県の腎臓内科医のブログ

透析医療の現状を疑問に思い腎臓内科医になる事にしました。

蛋白尿を見つければどうすれば良いか?

『蛋白尿があればすぐに病院を受診して下さい。』

 

 責任をとる事が出来ない生半可なウェブメディアはそう言うでしょう。確かにメディア側のそうする気持ちは分かります。医療系のウェブメディアで間違いを1つでも犯したら訴えられる可能性があり、仮に1万人に読まれる記事でそのリスクを回避しようとすれば、0.01%でも可能性があれば病院に行きなさいと言わなければなりません。結局メディアは責任を取れないのです。

 

 しかし、働き盛りの世代は、病院に簡単に行けるほど暇じゃありません。しかも、高齢化社会で病院は高齢者で一杯。待ち時間は平気で一時間、二時間かかってしまいます。

 

 また日本では慢性腎臓病という腎臓の機能が落ちた患者が1000万人いると言われるのに、腎臓内科医は日本では未だマイナーな診療科であり4000人くらいしかいません。地域医療の中である大学病院に腎臓内科がない県も多くあります。そんな中で、蛋白尿の患者全てが腎臓内科医のところに殺到したら大変な事になります。

 

 近くの開業医に行けばと良いという案もありますが、開業医の先生方は風邪の診療や高血圧、糖尿病の診療から緊急性のある患者を中核病院に送る診療、在宅医療など多岐に渡ってみており、そんな中でマイナーな診療科である腎臓内科の蛋白尿の事をしっかり把握されている先生方は相当優秀かつ勤勉で頭が上がらない方というのが僕の正直な気持ちです。

 

 結果、多くの患者さんが蛋白尿を経過観察され、しっかりしたアセスメントをされないまま重症化し、やっと地域の中核病院の腎臓内科に運ばれてきます。

 

 こうした現状の中でも私自身としては蛋白尿の診療がもっと多くの人に行き渡るべきだと思うし、それによって腎臓の病気を早期発見でき、透析になるような人が減れば良いと思ったので、今日は腎臓内科の目線から蛋白尿をみつけたらどうするかについて書きたいと思います。

 

蛋白尿そのものについては下記へ。

 

korokorokoro196.hatenablog.com

 

 蛋白尿の診療の流れは意外とシンプルです。なので、この記事で皆様が自分自身で勉強してしまえば良いと思います。下の図をみて下さい。

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この図はガイドラインという診療の王道を記した教科書みたいな所に載っている図で、日本腎臓学会が公式に発表している蛋白尿の診療の流れです。

 

この流れにおいてポイントは3つあります。

 

1:異常値が出たら、早朝にもう一度測定します。

 健診のデーターが本当に異常か確かめる必要性があります。というのは起立性蛋白尿といって、昼に身体を動かしている時に蛋白尿が出てしまう事がありこれは明らかな異常所見ではありません。なので『朝』にもう一度測り直してください。

 

 おそらく、開業医の先生の所に行くと、じゃあ朝の尿を持ってきてくださいと言われると思うのですが、二回も診療所に行くのは働く社会人にとってキツイと思うので、初診の時に、早朝に採った尿をペットボトルでもなんでも良いので入れて持っていき『今日早朝の尿を持ってきました。』と言えばその日に測ってくれると思います。

 

 しかし、世の中にはそんな時間を取る事も出来ない多忙の方が一杯います。医者は『命に関わる事なので仕事を休んで下さい。』と言いますが、僕個人としては、仕事を休めない社会人の気持ちもすごく分かります。実際、僕も歯周病予防の歯医者に全然行けてません。

 

 医者として失格かもしれませんが、どうしても医者に行く時間がないという人にはamazonで売っている尿蛋白試験紙を使って自分で測定して下さい。もしかしたら薬局で売っている可能性があります。

www.amazon.co.jp

 

この試験紙で測定して尿蛋白1+以上だったら、ご多忙の所申し訳ないのですが病院に行って下さい。病院で正しく測定する事を医者としてはおすすめはしますが、病院に行く暇がないという理由で放置されるぐらいなら市販の試験紙に委ねるのも大切だと個人的には思っております。

 

2:女性の方は生理を避けて下さい。

 生理中に尿検査をすると、間違って血尿と判断されてしまいます。蛋白尿と共に血尿が出ていると腎臓内科としても診療するモードが変わってしまいます。本当は血尿じゃないのに、血尿と判断される事により余分な検査を受ける事になるので、生理中は尿検査を避けてください。

 

3:腎臓内科への紹介基準を患者さん自身が覚えて下さい。

 先ほど申し上げた通り、開業医の先生はとても忙しく、マイナーな腎臓内科の蛋白尿の診療に時間をかける暇などないのが現状です。また現代の医学情報は膨大になっており全てを理解する事など到底無理です。私は腎臓内科医ですが、他の領域になると自信を持って診療を進める事が出来ない事も多くあります。情けない限りではありますが、例えばポリープの診療や歯周病の診療なんかに関しては正直胸張って診療出来ません。

 

 蛋白尿診療において、かかりつけ→腎臓内科専門医に紹介する基準は決まっています。以下の3つが基準になります。

A:蛋白尿2+ or 0.5g/gCrの時。
B:eGFR50以下の時。
C:蛋白尿1+及び血尿1+の時。

 患者さん自身が自分の検査データーをみて、自分が腎臓内科専門医に紹介されるべきかを判断して下さい。もし該当されるようであれば、担当の開業医の先生に先ほどの載せた図を見せて下さい。もう一回貼っておきましょう。

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 この時大切なのは、ちょっと申し訳無さそうな顔をして『友達の腎臓内科の先生が2012年の日本腎臓内科のガイドラインの蛋白尿診療に関しての写真を送ってくれて・・・』みたいな適当な嘘をつく事です。医者にとって、患者さんに『知らない』という事実を突きつけられる事はとても怖い事です。何年も何十年も培ってきた信頼関係があるのであれば今後も構築し続けるべきだと私は思います。こんな事をいうと色んな人から怒られますが、人生において時には嘘をついたほうが得な事があると私は思います。こういう時は適当に嘘をついて無駄な損失は避けましょう。

 

 

 その後腎臓内科の所に行ったら、採血、採尿、画像検査を行います。しかしながら、それでもよくわからなかったり、どのくらい腎臓がやられているのかを調べる必要がある事があります。その際には、「腎生検」を行います。下記の記事などは端的でわかりやすいと思います。

 

korokorokoro196.hatenablog.com

 

 外来を受診する前に読んでおいたほうが話が理解が早くなり、余った時間でいろんな質問を医師にすることができるようになります。

 

 蛋白尿は腎臓のSOSです。私の実感として働き盛りの50-60歳の方が検診で指摘される事が多く、仕事で病院なんて言ってられないような人ばかりです。なので、空いている時間にこの記事を読んで、効率よく診察を受けて早期診断、早期治療に結びつけて透析になるような人が減れば良いなと思います。 

 

 

 

そもそも蛋白尿ってなんですか?

端的に言うと蛋白尿は腎臓のSOSです。というのも蛋白尿は普通の人には出ません。人間には腎臓という尿を作る臓器があるのですが、その腎臓という臓器は『必要な物を取り込んで、不要な物を排泄する』という役割があります。

 

蛋白は私達の筋肉になったり、免疫を司る物質になる大切な物です。身体に必要なもののため腎臓で尿として排泄される事はほとんどありません。もし仮に今この記事を読んでいただける方で健康診断などで蛋白尿が出ていると言われた方は、尿として『出ていくはずのない蛋白』が排泄されているのでもしかしたら腎臓になんらかの異常があるかもしれません。

 

基本的に蛋白尿が出る原因は、大きく3つあります。

 

1:起立性蛋白尿

 よく小学校の健康診断の際に、朝一番の尿を採ってくるように思われたと思います。何故かというと、日常生活を送っているだけで蛋白尿が出るからです。腎臓のSOSと思いきや、単純に日常生活を送って少し腎臓にストレスがかかって偶然出てしまったというパターンが相当数あります。実際、私が診療していて、健康診断で検尿で蛋白尿が出て紹介された方の中には、本当は朝一番で尿を採らずに尿を提出してしまったという方を多く診います。

 

 こういう場合を想定して、尿蛋白が出た患者さんには再びしっかり朝一番で検尿してもらい、しっかりとした検査結果を見て本当に腎臓のSOSかを確認します。

2:生活習慣病関連

 高齢化社会の日本において、高血圧、糖尿病になっている方は大勢います。また喫煙や尿酸値が高い人も多くいます。生活習慣病は腎臓に物凄く負担をかけます。腎臓が完全に壊れてしまった方は透析が必要になるのですが、透析の原因の第1位は糖尿病です。また高血圧による透析の患者さんも日本には多くいます。

 

 高血圧であっても、糖尿病であっても、蛋白尿が出ているという事は腎臓にとってはかなりダメージを受けております。一刻も早く、規則正しい生活、内服薬による加療が必要な段階まで来ていると考える事が出来ます。

 

 実は、腎臓という臓器はなかなかシブトイ臓器で、健康な腎臓が100とすると、15ぐらいになるまで機能が落ちないと症状が出てきません。逆に症状が出た時には、既にどうしようない状況になっている事例が相当数あります。

 

 それまで腎臓は、蛋白尿というSOSをずっと出し続けています。このSOSにしっかり気づく必要性があると思います。

 

3:病気

 免疫の病気や遺伝の病気など様々な種類がありますが、共通にするのが、生活習慣の改善のみではなく、特別な治療をする必要があります。日本で特に多いこの類の病気はIgA腎症です。IgA腎症は免疫の病気で、蛋白尿とともに血尿を伴っている事が多いです。また風邪を引いた後に目に見えるような血尿が出たりします。症状が重い場合はステロイドのよる治療や、扁桃という口の中の部分を切除したりします。

 

 腎臓は症状が出るまで時間がかかるため、蛋白尿というSOSだけ出ている可能性があり、そのSOSに気づいてあげるのが大切です。

 

 

 まとめると、蛋白尿が出る原因は色々ありますが、腎臓のSOSである可能性が高く放置する事で食事制限にしなくてはならないほど生活に規制が出たり、透析になる可能性があるため早期発見、早期治療が求められる事を知っていただけると有難いと思います。

 

 

 

糖尿病で蛋白尿(アルブミン尿)が見つかった人に、腎臓内科医として絶対伝えたいたった一つの事 

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 腎臓内科として日頃から糖尿病で腎臓が悪くなった人を多くみます。糖尿病で腎臓内科に紹介され受診した人の多くは今後透析になっていく人が多いのが現状です。僕は『なるべく透析にならない』ような医療をしたくて腎臓内科になる事を決めた手前、目の前の患者さんだけでなく、日本に300万人もいると言われている糖尿病の患者さん、特にその中で2割ぐらいを占める、症状は無いけど、蛋白尿(アルブミン尿)が出ているような進行早期の方に是非知ってもらいたくてこのブログを書いています。

 

 

 ちなみに、僕の医者として大事にしているのは、研修医時代の恩師がよく言っていた『健康よりも自由の方が大事である!』という言葉であり、スタンスになっています。

 

 健康のためにケーキ食べたらダメ、ラーメン食べたらダメ、だめだめ・・・・、という風にやたらむやみに患者さんの意思を無視して頭ごなしにダメダメいう医者にだけなりたくないと思っています。

 

 健康でいたいけど、接待で不規則な生活をしなくちゃいけないとか、妻の料理の味付けが濃くてなかなか塩分制限が出来ないとか、ケーキ好きだから食べちゃうという、人間の性であったり、矛盾にこそ、人間らしさがあり、だからこそ医者の仕事は面白いんじゃないかとも思っています。

 

 そんな基本ゆるーいスタンスの私でも、自分の家族が糖尿病だったらしっかり薬を内服して欲しいと思います。少なくとも、糖尿病という病気については知ってもらいたいと思います。糖尿病で腎臓が悪くなった人の多くは、『知らなかった』事を後悔しているように見えます。では行きましょう。(今回は2型糖尿病の話です。)

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取り敢えず、下の図を見てください。今日の肝です。 

 

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糖尿病性腎症ならびに腎硬化症の診療水準向上と重症化防止にむけた調査・研究 研究班 編  

(上の経過はあくまで典型例であり例外もあります。)

 

『糖尿病ですけど、何か?』(青〜黄色の左半分)

この図で第一に大事になるのは、糖尿病になってから数年間何も起きないという事です。この記事を読んでいる多くの人は、健康診断とかで『あなたは糖尿病です。』って言われたけど、別に生活に困ってないし、『糖尿病ですけど、何か?』ってというスタンスの方が多いと思います。上の図でいうと青〜黄色の左半分の人ですね。

 

症状も無いし、困っていないので不規則な生活を続ける方も多く、糖尿病の薬も面倒くさいし、病院も待ち時間多いから行かないっていう方が多くいます。医者の中には糖尿病になったけど治療しない人達を『考えられない、何かあっても自己責任だからな』と言う人もいますが、飲み会大好き、朝まで飲むぞーっていうタイプの駄目駄目な情けない医者の私は、少しだけ理解出来てしまいます。

 

結果、日本の糖尿病患者さんでしっかり治療継続しているのは半分くらいと言われています。残りの半分は、症状が出るまで病院に来なくなるのが糖尿病治療における大きな問題点となっています。どんなに良い薬が出ても、結局薬を飲み続ける人が少ないのが現状

 

なんか、物が見えにくいんですけど、後痺れがあります。(黄色の右半分)

放置していた患者さんが再び病院にくるのがこの時期です。目の霞み、痺れのような症状が出てやっと治療の必要性を感じて治療を行います。上の薄いオレンジの部分の左半分くらいの段階です。この時すでに、顕性腎症と言われる段階の一歩手前の状態です。この顕性腎症と言われる段階で、黒線がいきなり急降下しているのが悪いのが分かると思います。つまり顕性腎臓の時に急激に腎臓が悪くなっていきます。健康な人の腎臓が100点とすると、多い人では毎年20点ぐらい腎臓の機能が落ちる事も多々あります。そういう人はいままで健康だったのにたった5年くらいで腎臓の機能が10点、20点になってしまいます。

 

腎臓がドンドン悪くなっていきます。(オレンジの部分)

腎臓は、体に必要なものを再吸収して、不要なものを外に出す役割があります。腎臓働きが落ちるとむくんで体がパンパンになったり、不要物が体に溜まって味覚が低下したり、食欲がなくなったり、下手すると意識が朦朧としたりします。結果、腎臓で出来ない事を『透析』で賄うしかなくなってしまいます。濃いオレンジの領域がこの段階ですね。

 

じゃあどうやって見つけるの?(オレンジの実線、点線に注目)

糖尿病はなかなか症状が出ないくせに、いざ症状が出た時には目の前に暗黒の世界が待ち受けているという点がとっても厄介だと個人的には思っています。そこで、症状が出る前に、体のSOSを発見しようと試みが行われました。そこで見つかったのが、アルブミン尿、蛋白尿です。

 

アルブミン、蛋白は身体に必要な成分なのにも関わらず、尿に出てきているという事は腎臓が悲鳴をあげているという事の照明になります。症状が出る前に体内の異常を発見する良い指標になります。

 

糖尿病って治るの?

そこで気になるのは、糖尿病による腎臓の障害は果たして治るのかという話です。端的に言うと、あまりはっきり分かっていません。ちなみに腎臓は大方、一度壊れると再生しない臓器です。そのため従来は、アルブミン尿や蛋白尿は一度出てしまうと一生出っ放しだと言われていました。しかし、近年、早期に治療を行えばある程度再生する可能性がある事が分かってきました。

 

大事な事なのでもう一度書きましょう。早期治療介入すれば、治るが可能性あります。

 

10年くらい前の研究では、正しく治療をすれば黄色左半分だった人の半分ぐらいが青色の所まで回復しました。また最近の研究では薄いオレンジの所まで行ってしまった人は厳しい中でも頑張れば半分程の人が黄色の所まで回復する事が分かっています。

 

しかしながら、濃いオレンジの所まで行ってしまった人はなかなか厳しいのが現状です。大切なのは早めにしっかり治療介入する事です。

 

最後に伝えたい事。

実は私は医者でありながら、自身あまり長生きしたいとは思っていません。健康に気をつけるばかり、楽しい事を我慢するような生活をしたくはありません。飲み会大好き、肉大好き、酒大好きな人間です。

 

しかし、とある日本の有名な作家が残した名言通り、『高齢化社会になり、死を自らがデザインする時代になった』という言葉は医者をやっていて非常に本質をついていると痛感される事がとても多いのも事実です。

 

糖尿病で蛋白尿、アルブミン尿が見つかった方々が、もし私のこの記事を読んでいただけているのであれば、少しだけでも構いませんので、今後のあなたの糖尿病との付き合い方に想いを寄せて頂けると幸いです。

 

僕は、冒頭で『健康』よりも『自由』を尊重する医者です。糖尿病を放置する事は『自由』です。その選択を私は最大限尊重します。(勿論、医療費の問題を考えると私の判断は間違っています。)

 

しかし『知らなかった』とは言ってほしくはありません。早期であれば、少し生活習慣を変えて、薬を少し飲むだけで多くはコントロールできます。今の時代、採血は近くの施設ですぐに出来、遠隔診療で病院に行かなくても薬はもらえます。薬の質はものすごく上がってます。

 

大方の糖尿病が患者さんの『意志、選択』で予後は大きく左右されるようになってきています。是非とも、私のこの記事で糖尿病との付き合い方に想いを寄せて頂けるような機会を作っていただければ私として幸いです。では失礼しました。

 

 

*二点補足

(分かりやすさのために敢えて正確な表現を崩している部分が多くあります。糖尿病を専門にしている先生方にとっては大変失礼な表現をしているかもしれませんが、必要悪と判断してそうしております。お許しください。)

 

(糖尿病の中には食事制限したり、内服を頑張っても中々コントロールできない事もあります。全ての糖尿病において悪化=怠惰の構図が成立するわけではありません。糖尿病と必死に戦っている方とっては不適切な表現が含まれているかもしれません。ご了承頂けると幸いです。)

 

専門医制度に振り回される初期研修医二年目の先生方へ

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専門医制度、特に内科の専門医制度が揺れています。実際、昨年研修二年目だった自分も専門医制度のゴタゴタがあり大きく振り回されました立場でした。なので、現在研修医二年目の先生達の苛立ちは本当に分かります。私自身、相当苛立っていました。私の同級生の多くも相当苛立ち、特に研修期間が長くなる内科領域を辞めるような人も一杯いました。

 

 当時、専門医制度は立派な専門医を育てるために作られた仕組みであるのに関わらず、出て来る話は『医局の覇権の復活』を匂わせる制度であったり、何のために書かなくてはいけない『大量のレポート』の話だったりして、『結局この制度は僕達の事なんて何も考えていないじゃん!』と毎日憤っていました。最終的に専門医制度は一年延期になり、現行制度で継続になりました。

 

 僕の同級生達は、専門医制度が代わる前提で物事を考えていた人が多く、多くの人が大学病院や都内のブランド病院に行きました。一方で僕は地域の誰も名前を知らないような慢性期の病院に行くことにしました。

 

 学生の時に小児救急を含めた救急医療をやりたくて都内のブランド病院を研修先に選んだ訳ですが、実際働いて、運ばれてくる患者さんたちを見て、根本的な問題点は日頃からの日頃の生活習慣にあると考え、特に問題意識の強い腎臓内科になる事にしました。

 

 当初、自分も都内の大学病院に勤務しようと思っていました。今後の専門医制度の動向を考えると医局に属したほうが無難と考えたためです。しかしながら、ある日1人で酔っ払って物思いにふけていた時に、医局に入って自分がやりたいこと、特に腎臓領域の生活習慣の改善指導や、保健師を含めた地域医療、公衆衛生的なアプローチのような事を医者3年目からすぐ取り組めるような気がせず、自分のやりたい事を先送りにするのがどうしても嫌になり、全国各地どこでもいく覚悟で病院を探し、最終的には都内を離れて循環器内科も消化器内科もないような田舎のお世辞にも綺麗と言えない小さい病院で働いてます。

 

 皆が急性期バリバリの大学病院や大病院で勤務する事を決めた中、自分は夜間にろくに検査も出来ない病院にいくという不安で研修医時代はとても不安でした。今でもとても不安です。先日は1人の当直で患者が呼吸苦になり、採血もレントゲンもすぐに出来ないような環境で心臓超音波でなんとかAsynergyを見つけてなんとか診断をつけたりしてます。大きな病院では検査もすぐに出来て、多くの科の先生がいて、しっかり教育を受ける事が出来ると思います。急性期に関しては既に昔の同期と大きく差をつけられている気がします。

 

 しかしながら、着々と自分のやりたかった事を出来るようになってきてます。腎臓内科は有名な病院で上の先生方も尊敬出来るような人が多く、多くの患者さんの主治医、執刀医になる事が出来て、このままだと数年後に透析になってしまうような人達になんとか今ある腎臓を大事にしてもらうために行動変容をさせようと説明する毎日を送っております。まだまだ研修医が終わったばかり毎日病棟業務で必死ですが、保健師との会合や、減塩料理教室、減塩の小さな研究、透析導入の小さな調査といったフィールドに寛容な心で見守ってくれる先生方のおかげで首を突っ込めています。

 

 

 自分は専門医制度が現行制度で継続したため専門医制度は取れてしますので、こんな事を言うのは卑怯だと思いますが、『自分のやりたい事があるなら腹括って、自分を信じて人と違う道を歩み』という事が大切なんじゃないかと振り返ってみて思うわけです。

 

 僕達が家族を養う50歳とかになった時、日本は医師過剰になっている可能性があります。皆が取る専門医制度の顔色を伺っていても、明るい未来が待ってるなんて到底思えません。僕達の世代に安定が存在しない事なんて、頭の中お花畑の人でも分かるでしょう。

 

 ちなみに私は個人的に新専門医制度は、コンセプトは素晴らしいと思っています。20年前、初期臨床研修を経験していない内科の先生より、経験した今の35歳ぐらいの内科の先生達の方が知識が幅広くて優秀だなと初期研修の時思った事が数十年後、新専門医制度を経験していない自分の身に降りかかると思うと怖いものです。決して、専門医制度自体は私は非難するつもりはありませんし、専門医なんて取らなくて良いという無責任な先輩にはなりたくありません。

 

 ただ去年、専門医制度に苛立ってた自分を振りかえって思うのは、『専門医制度に苛立っている人程、専門医制度に踊らさせてはいけない』という事です。苛立っている感情にはなんらかの理由があります。一度怒りを沈めて、しっかり自分を振り返ってみましょう。

 

 もし、専門医制度があのまま遂行されていれば、僕は間違いなく、専門医制度を理由に考える事を辞めて医局に属していたと思います。そして、今、毎日のように得られる充実感を得る事が出来ず、専門医制度に苛立ちを持ち続けていたでしょう。

 

 恐らく専門医制度は、僕達のことなんて絶対考えてないでしょう。国の事情、大人の事情があるんだと思います。そんな中だからこそ、しっかり自分を持ち、うまく付き合いながら、自分の人生をデザインしてほしいと強く思います。

 

 こんな事を偉そうに言っている自分も昨年は絶対できませんでした。見えない大きな力に自分から飲まれていったでしょう。専門医制度延期のおかげで得た充実感を毎日感じているに過ぎません。だからこそ、今悩み多き、研修医二年目の先生方の参考になればと思いブログを書かせてもらいました。生意気をお許し下さい、では失礼します。

説明書を作成しました。〜腎生検を受けられる方々へ〜

 腎臓内科医として勤務する辺り、患者様と時間をゆっくりとって診療したり、話を聞く事が出来ない事に悩んでおりました。限られた外来の時間や入院中の時間になるべく多くの情報を聞き出し患者様に還元出来ればと考えてこの度説明書と問診票を作成させて頂きました。重複する内容もあり大変恐縮ではございますが熟読及び記載の程宜しくお願い申し上げます。

 

1:腎生検を行う理由

 このページを読まれている方の中には蛋白尿が検出された方、血尿が検出された方、腎臓の機能が落ちてきた方などがいらっしゃると思います。それらの症状を治すためにはまず原因を見つけなければなりません。原因を見つける方法は採血検査、採尿検査、画像検査などがありますが、その中で腎臓の組織をとってきて顕微鏡でみて腎臓の状態を直接評価する方法があり腎生検と言います。腎臓の血管をみたり、尿の通り道をみて現状がどうなっているのかをみて診断します。採血や採尿検査と違い、腎臓『そのもの』を見るためしっかり診断できるのが売りです。

 

 しかしながら、腎生検は簡単に行えるような検査ではありません。背中に針を指して腎臓を取ってくるわけですが、仮に腎臓の血管を指してしまった場合は出血してしまいます。また菌が入れば感染してしまいます。腎臓の出血、感染をしてしまった場合、輸血や抗菌薬投与を行います。外科手術や輸血を必要とする場合は0.2%程度ですが、なってしまった時の重症度も考えて基本的には5-7日程度しっかり入院していただいております。

 診断に有用だが、危険を伴うためリスクベネフィットを検討して腎生検を行います。

 

2:腎生検の実際

http://www.mayoclinic.org/-/media/kcms/gbs/patient-consumer/images/2013/11/15/17/35/ds01047_-my00088_-my01223_im04229_mcdc7_kidney_biopsythu_jpg.ashx

http://renalmed.com/wp-content/uploads/2015/06/Kidney-Biopsy-300x250.png

 上のように患者様にうつ伏せになってもらいます。超音波で腎臓の位置を探して、息止めの練習をして針を指します。痛くないように局所麻酔をします。だいたい30-60分程かかります。

 

 その後、腎臓から出血しないように圧迫します。終わってから10分ほど医師が患者様の背中を手のひらで圧迫します。その時少し息苦しい感じがあるかもしれません。その後、仰向けになります。背中に砂嚢を入れて自分の体重で圧迫します。砂嚢は数時間で取れますが、腎生検から翌朝までずっとうつ伏せで寝て頂きます。(正直結構大変です。)

 

 お食事に関しては、寝たまま串刺しの食事とおにぎりを家族の介助の元食べて頂きます。ご家族には腎生検をする際には来ていただくように宜しくお願いします。

 

3:腎生検後

 

 腎生検翌日から普通に生活されて大丈夫です。ただし腰をひねったり激しい運動は控えて頂きます。翌日に採血で大量出血してないかを確認させて頂きます。3-4日経過をみて退院します。結果は1週間後に出ます。2週間後辺りで外来を受診していただき、その際に結果説明と今後の方針を決めていく事になります。

 

 

CKD患者にSGLT-2阻害薬は使ってよいのか?

EMPA-REG OUTCOME試験のサブ解析でSGLT-2阻害薬に腎保護作用があるという報告が出てから腎臓内科医にとって

 

「SGLT-2阻害薬がeGFRがどのくらい低下するまで使えるか」

 

というのはとても気になるところである。という事でSGLT-2阻害薬について自分なりにまとめてみました。

 

1:なぜ効果があるのか 2:どのくらい効果があるのか 3:どのSGLT-2阻害薬が良いのか 4:eGFRどこまで使ってよいのか。(建前) 5:eGFRどこまで使ってよいのか。(実際)

 1:なぜ効果があるのか(生理学的)

 ざっくり言うと、糖-Na再吸収を抑える→遠位尿細管に届くNaが増える。→マクラデンサが尿中Naと勘違いする→糸球体のFeedback下がる→輸入細動脈に流れる血流下がる→糸球体内圧が下がる。

 

『Empagliflozin, Cardiovascular Outcomes, and Mortality in Type 2 Diabetes』http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1504720#t=article

dm-rg.net

 2:どのくらい効果があるのか

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『EMPA-REG OUTCOME: The Nephrologist's Point of View』http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0002934317304606

RAS系を飲んでる人が7-8割いるのも関わらずしっかりと結果を残している。しかし新規尿中Albの出現抑制は認めず。機序からも糖尿病性腎症初期の過剰濾過のときに使うのが使い時なのであろう。

 3:どのSGLT-2阻害薬が良いのか

 今月のカナグロフロジンの臨床研究の報告次第ではあるが、今のところジャディアンスの一人勝ちのイメージ。シンプルに

 ジャディアンス 10mgもしくは25mgと覚える。

 4:eGFRどこまで使ってよいのか。(建前)

 

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『EMPA-REG OUTCOME: The Nephrologist's Point of View』http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0002934317304606

 Simple is best→赤い所だけ覚える。ガイドライン、添付文章的にはeGFR<45は基本使わない。

 5:eGFRどこまで使ってよいのか。(実際)

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『EMPA-REG OUTCOME: The Nephrologist's Point of View』http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0002934317304606

 eGFR30-45に関しては症例によっては効果がある。しかしeGFR30以下には効果がない。

 

 後、これはスーグラの話ではあるが、下記のような記事あり。 

www.carenet.com

 

 高齢、痩せ、腎機能低下では使わない方が無難。30人に1人の低血糖が生じる可能性あり。結構多いかも。

 

 

<まとめ>

・SGLT-2阻害薬は糖尿病性腎症の進行抑制にはなりそう。eGFRが保たれている人は積極的に使いたい。今後もっと市民権を得ていくと思われる。

・副作用は尿路感染、低血糖などが報告されているが数字を見た限りそこまで気にしなくて良い。

・eGFR30-45に関しては、症例を見て検討。それ以下は現段階では使わない。RASが腎機能が悪くなってもギリギリまで使用されるようになったみたいに、今後使用される適応は増えていくのではないだろうか。

 

 

『日本において医師の業務プロセスの効率化・自動化が決定的に遅れている』  

 先日まで腎臓内科、膠原病、糖尿病をローテートしておりました。将来、腎臓内科になることもあり結構な気合を入れて臨んだローテートだった訳で、多くの勉強ができた充実感と共に反省が多い1か月でした。

 

 上級医の後を追ってカルテを書くだけの1か月には絶対したくないと思ったので、最初の頃は5時には出勤して先回りをして上級医が来たときにはカルテだけでなく、ある程度の問題点の解決を根拠をもって説明できるようにしてやろうと思って望んだ矢先に様々な困難が押し寄せました。

 

 それは圧倒的な時間不足でした。

 

 冬ということもあり担当患者の数が多く30人程度になることもありました。仮に医師が12時間勤務すると、30人担当患者を持つと回診、処方出し、指示出し、カルテ記載、入院退院サマリ全てを含めた仕事を1人辺り20分で済ませなければなりません。そこにカンファレンスがあり、看護師、薬剤師からの電話が入ったり、当直があったり、急変したりします。いうまでもなく12時間で業務は終わらず、参考書を読んだり文献を読んだりする時間は全然取れませんでした。そこにすごくストレスを感じ始め3週目あたりからドンドン悪循環に陥ってしまいました。上級医になると、外来が入り、外科医だと手術も入り込みます。

 

 悪循環で結構な人に迷惑をかけ結構反省があった1か月だったのですが、敢えて自分のキャパの少なさを棚に上げることができるのであれば、

 

もっともっと業務の効率化・自動化が進んでほしいと強く願いました。

 

看護師、薬剤師などの電話は緊急性が無ければ、LINEのメッセージ機能を使用して行えると大分効率化されます。電話は一旦乗りかけた仕事のペースを一気に遮断します。患者Aのことをしている最中に患者Bのことを電話されるとカルテを切り替えて対応するのに数分はかかってしまいます。正直、PHSiphoneにして医師、看護師、薬剤師すべてに持たせたらどんなに楽にコミュニケーションとれると思うと希望を感じてしまいます。

 

www.keyman.or.jp

 

紹介状などもすごく時間を食います。先月研修に行ったアメリカのオハイオの病院では診療所と中核病院がカルテを連動していたため、診療所の検査結果をみることができます。それに対して、日本では診療所に電話をして、検査データーをFAXで送ってもらい、スキャンした上で、その文をいちいち手書きで打ち直して、入院サマリを書いています。

 

参考:

www.recruit-dc.co.jp

 

電子カルテに関してもまだまだ改善することがいっぱいあります。私たちのような若い世代はまだしも、年配の先生は右手と左手の人差し指だけで一生懸命電子カルテを記載しています。そんなところにAmi Voice Clinicのような音声でカルテ記載するソフトが導入されればどんなに楽なんだろうかを思ってしまいます。Ami Voiceに個人契約できないか現在問い合わせしております。

 

www.youtube.com

 

病院経営において、人件費は55%程度かかるといわれています。人件費削減のためにITの力を駆使すれば現場の医療関係者のみならず病院経営者にも良い影響を与えます。病院現場の需要とITエンジニアの交流会を開いて新しいアイデアが生まれるとよいと思います。

 

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昔日本の医療現場を視察にきたアメリカの調査団が、疲弊する医師と看護師をみて、『日本の医療は医療者の犠牲的献身性で成り立っている』という風にコメントをしたという話があるように(実話??)、医療現場の雰囲気や根性論に流されず、頼れるものには頼って、本当に大事なことに時間を使えるようになる事を心から望んでいます。自分にできることは微々たるものですが、私自身がこれをほしいと思い、日本の病院現場のこれからに必要だと思った仕組みを作っている会社に投資することにします。