千葉県の腎臓内科医のブログ

透析医療の現状を疑問に思い腎臓内科医になる事にしました。

アルブミン尿が心筋梗塞や脳梗塞の発生率と関連があるという話

前回は慢性腎臓病が、心筋梗塞脳梗塞などの血管関連の病気になる危険性を数倍にしてしまうというお話をさせて頂きました。

korokorokoro196.hatenablog.com

 

さて、今日はちょっと一般の方より医学生や看護師さん、研修医向けの話になってしまいますが、アルブミン尿という蛋白尿の一種(?)もまた、心筋梗塞脳梗塞の危険性が高い事を示す指標になるという話をします。

 

 

僕が腎臓内科になって一ヶ月くらいの頃にこの図をみて衝撃を受けました。

 

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(Bouchi R, et al. Hypertens Res 2010;33:1298—1304. より引用,改変)

 

横軸のeGFRというがざっくり『今の腎臓が100点満点で何点なのか』、

縦軸のハザード比というのがざっくり『何倍心筋梗塞脳卒中になるのか』

を意味します。

 

緑が『アルブミン尿がない人』

紫が『ちょっとアルブミン尿がある人』

赤が『結構アルブミン尿がある人』

を意味します。

 

この図が意味しているのは、

『仮に腎臓の点数が同じでも、アルブミン尿が出ている人、アルブミン尿が出ていない人では心筋梗塞脳卒中になる危険性で全然違う。』

という事です。

 

当たり前ですけど、血管は全身で繋がっています。詳細は割愛しますが、アルブミン尿が出ているという事は腎臓の血管に負担がかかっている事を示唆します。高血圧やタバコによって受ける血管の負担は腎臓の血管にだけにかかるわけではないので、心臓の血管や、脳の血管にも負担がかかっており、心筋梗塞脳卒中になる危険性がたかい可能性があると解釈できます。

 

アルブミン尿はよく糖尿病性腎症という糖尿病による腎臓の障害を早期発見するためによく使われるのですが、それだけでなく、つまり腎臓だけでなく、心臓や脳の病気になるリスクを評価する事ができるという可能性を提示しました。

 

論文大好きな先生方はここらへんを読んでみたらどうでしょうかね?

Hypertension Research - Association of albuminuria and reduced estimated glomerular filtration rate with incident stroke and coronary artery disease in patients with type 2 diabetes

Albuminuria and cardiovascular events in patients with acute coronary syndromes: Results from the TRACER trial - ScienceDirect

 

前回のブログでは、腎臓が60点以下になると心筋梗塞脳卒中などになるリスクが上がるという話をしましたが、それとはまた別に尿からアルブミン尿が出ている事がリスクを上げるというのが本日のブログの味噌です。

 

将来、循環器内科や脳外科になる先生方や家族に心筋梗塞脳卒中が多くて自分も心配な看護師さんに是非、頭の片隅に心臓、脳のリスクの評価にはアルブミン尿も良い検査だと思っていただければ幸いです。

慢性腎臓病とは? 〜なぜ医者は腎臓が60点以下になると騒ぎ始めるのか〜

今日は慢性腎臓病の話をします。慢性腎臓病とは一般の方々向け用の言葉を使うと【100点満点の腎臓が60点以下になった状態】を言います。(正確な定義は他でググって下さい。)

 

僕のブログでは腎臓は

①体に必要な物を出ていかないようにする。

②体に必要ない物を出す。

という2つの役割をしているという説明をしていますが、その腎臓が全く機能しなくなると必要な物が抜けていったり、不要な物(毒素や不要な水分など)が体に溜まってしまいます。最終的には透析をしなければ生活をできなくなったり、生命を保てなくなるような状況になってしまいます。では実際、腎臓が何点以下になると透析が必要になると思いますか?

 

 

実は15点くらいになるまで自分で気づくような症状が出ないことが多く、5-10点ぐらいまでは透析がなくても生活が出来てしまいます。腎臓はしぶとい臓器なんです。

 

では今日の本題は『〜なぜ医者は腎臓が60点以下になると騒ぎ始めるのか〜』という話です。よく医学生の方や初期研修医の先生に質問すると、『透析になるリスクが上がるからです。』と答えます。それも正しいのですが、それと同じくらい、いやもっと大事な事があります。

 

下の図をみて下さい。ちなみにこれらの図は2004年にアメリカのNew England Journalという世界でも有名な論文を発表する雑誌から発表された論文で紹介された結果です。

(ちなみ研修医でも上の先生と意見が食い違った時に『New England Journalに載ってました』というと少し怯むぐらい有名な医学情報が詰まっているイメージを持って頂けると幸いです。)

 

横軸が先程から私が言っている『腎臓の点数』でeGFRという採血の項目です。(厳密には違います。)

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Aの図は『腎臓の点数が60点を切ると何らかの疾患で死亡する確率が点数が60点以上の人と比べて何倍になるか』をしめています。

 

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Bの図は『『腎臓の点数が60点を切ると心筋梗塞脳梗塞になる確率が点数が60点以上の人と比べて何倍になるか』』をしめしています。

 

 

みていただけるとわかりますが、『腎臓の点数が下がっている人は何らかの疾患で死亡する確率や心筋梗塞脳梗塞になる確率が上がる』事が分かります。

(ちなみに、これは何故腎臓が悪くなったかという話とも関連して、糖尿病の患者さんは腎炎の患者さんと比べて心筋梗塞脳梗塞になる確率が高いと言われております。)

 

次に紹介するのは、日本の研究です。

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左のAの図をみて下さい、CKDというのは慢性腎臓病、つまり腎臓が60点以下の状態の事です。CKDの状態だと12年の間に心筋梗塞などの病気になる可能性が35%ぐらいなのに対して、CKDではない状態の人は12%程度にとどまります。女性も同様の結果です。

 

右のBの図も『CKDの方が心臓の病気や脳の病気なりやすい』事を示しております。

 

 

以上をまとめると、『腎臓の点数が60点を切ると様々な病気になるリスクが大幅に増える』という研究結果が出ているため、腎臓60点以下の人には栄養指導をしたり、行動変容を促したり、薬物加療をします。

 

不安を煽るようなデーターばかり示しましたが、なんと日本には慢性腎臓病の成人人口は1330万人もいます。日本人の8人に1人が慢性腎臓病です。これは日本の0-15歳の子供の数である1600万人を追い越しそうな勢いで増えております。

 

しかし、腎臓の専門医は日本で4000人くらいしかおりません。専門医がどんだけ頑張っても手が足りません。しかも腎臓は内科のマイナーな臓器であり、心臓の先生は心筋梗塞、脳の先生は脳梗塞などで忙しく腎臓の事なんて気にしてられません。

 

医者は基本的に感謝をされる事がやり甲斐になる仕事であり、今目の前で困っている患者さんに強く心動かされる傾向にあります。それに比べて、腎臓は、状態がひどくなるまで、具体的に100点満点で15点ぐらいになるまで症状が出ません。すると、結果的に多くの腎臓の疲れやSOS、特に慢性腎臓尿や蛋白尿は後回しにされがちです。

 

腎臓内科は、透析や腎炎、ミネラルバランスなど幅が広い領域であり、どれもやり甲斐があるため、比較的慢性腎臓病を専門にする先生も珍しく、日本にいる4000人の中でも慢性腎臓病を一番専門にする先生は限られます。

 

なので、慢性腎臓病を専門にしていく私は恐らく変わり者だと思いますが、日本の子供全員の人数と同じくらい慢性腎臓病の人がいる中で、こうやってブログを書いて情報提供していく事にすごく意味があると密かに思っています。

 

 

話はずれましたが、『なぜ医者は腎臓が60点以下になると騒ぎ始めるのか』について書いてみました。今度は蛋白尿をもっと詳しく書くか、心臓と腎臓の話か、IgA腎症について書こうと思います。

 

(非医療者に向けて書いているため、表現の正確性を崩して表現しております。医者が正確性を崩す事には後ろめたい気持ちがありますが、医者が正確性にこだわりすぎるあまり非医療者に大事な事を伝えられていない事実も痛感しており、必要悪と思っております。ご了承下さい。)

 

CKD診療ガイド2009がわかりやすいです。2012年が最新で2017年が来年ぐらいまでに発売予定とのことです。

https://www.jsn.or.jp/jsn_new/iryou/kaiin/free/primers/pdf/CKDguide2009.pdf

 

 

 

 

 

 

微小変化型ネフローゼ症候群

先日はネフローゼ症候群に関して書きました。

 

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症候『群』って書いてある通り、ネフローゼ症候群は特定の病気ではなく、いろんな疾患(厳密には状態)を集めたものです。『ラーメン』が塩ラーメン、醤油ラーメン、味噌ラーメンの総称であるようなものだと思ってください。(良い例が思いつきませんでした・・・。)

 

今日はネフローゼ症候群の中で、『微小変化型ネフローゼ』に関してです。

 

 

微小変化型ネフローゼは小児〜成人にかけて比較的若い人におきます。腎臓内科医としては数あるネフローゼ症候群の疾患の中では、予後が良い疾患であり今後透析に移行する可能性が比較的低いため少し安心する疾患です。

 

しかしながら30-70%再発するため、患者さんや患者さんのご家族としては長く付き合っていく病気のため苦労がある病気だと思います。

 

症状としては、浮腫、体重増加( 1週間に3kgぐらい普通に増えます。)、下痢、尿の泡立ちなどが一般的で重症だと呼吸苦、無尿なども生じます。特徴としては他の疾患に比べて、発症日時がわかりやすい事が挙げられ、『なんか先週の日曜日から急に浮腫んだんですよー』みたいな言い方をする事が多いです。風邪や虫刺されがきっかけになり、発症する事が多いとも言われていますが、原因はわかっていません。

 

 

診断は問診、採血、採尿、画像検査に加えて腎生検という腎臓の組織を取ってきて顕微鏡でみる検査をします。

korokorokoro196.hatenablog.com

 

 

治療としては、ステロイドを使用した免疫抑制の治療を行います。大方、ステロイドに反応して治療できる事が多いです。しかしながらステロイドによる治療は、一度聞いたからすぐにやめる事はできず、ゆっくりゆっくり減らしていきます。またステロイドには副作用があり、血糖値が高くなったり、高血圧になったり、骨がもろくなったりします。適宜、その副作用に対して予防薬を内服するため数種類の薬と半年〜二年間ぐらいお付き合いする事になります。

 

 

ステロイドはよく効くのですが、再発の頻度が高く、特にステロイドを減量していく途中で再発したりします。再発した際には再びステロイド増量して仕切り直しをします。主治医の考え方にもよりますが、ケースバイケースでステロイドに加えてシクロスポリンという免疫抑制剤を加えて二剤使用し治療していきます。中には再発を繰り返す症例があります。最近リツキサンという血液内科で使用されていた薬が、再発を繰り返す微小変化型ネフローゼ症候群でよく効くのではないかと言われています。実際、私の先輩方や学会の発表ではリツキサンが次世代の治療の中心になるという声が多いです。

 

 

しかしながら、まだまだ新しい薬でありガイドラインという学会公式の教科書には、積極的使用を推奨しておりません。2014年が最新なのですが、2017年のガイドラインでは推奨度が上がるのではないかと個人的に思っていますが、待ちましょう。ちなみに現段階では一定の条件を満たした患者さんのみ保険適応になります。

下に2014年のガイドラインのURLを貼ったのでご興味があれば。無料です。

http://minds4.jcqhc.or.jp/minds/neph/neph2014.pdf

 

 

治療に関しては比較的な稀な疾患のため絶対的な研究も少なく、絶対的な王道の治療法もありません。その人の患者背景を見て主治医がデザインしていく事が多いため、私のこの記事と実際の治療が異なる場合は、絶対的に主治医の判断を優先してください。(混乱を招くような事だけは避けたいものです・・・。)

 

 

まとめると、予後は良いものの、再発が多い病気です。原因はよくわかっていませんが、免疫抑制が主流の治療になります。治療法の開発が進んできていますが、再発に関しては早期発見、早期治療が良いと思います。

 

僕は個人的には患者さんに薬局やamazonで試験紙を買ってもらって何か変だなと思ったら調べてもらってます。そうする事で病院受診する事の迷いが消えるのと、大丈夫だった時の不安が消えると思っています。あくまで自己責任の検査で同業者から身勝手と言われる事もありますが世の中の使えるツールはどんどん使って、患者さんにどんどん情報提供していく方が良いと思っています。amazonのURLを貼っておきます。

www.amazon.co.jp

 

なるべく書く内容を絞りましたが、追加した方が良い情報、知りたい情報などがあれば教えていただけると幸いです。

ネフローゼ症候群:尿から大量の蛋白が漏れる病気

今日はネフローゼ症候群の話をします。以前、蛋白尿の話をさせて頂きました。
korokorokoro196.hatenablog.com

 

その蛋白が尿から健康な人の数十倍漏れている状態で、伴って血液の蛋白が足りなくなる状態をネフローゼ症候群といいます。採血検査、採尿検査をされて手元に結果がある方はその紙をみて頂くと、採血のアルブミン(Alb)という項目が低く、採尿の尿蛋白・クレアチニン(Cre)比という項目が高くなっていると思います。

 

この蛋白が異常に漏れている状態の問題点は2つあります。

 

1:そもそも血液の蛋白が少ない事自体の問題。

 皆さんもイメージがつきやすいと思いますがタンパク質は身体にとって必要な物です。筋トレの後、タンパク質を摂取するのもそうですが、血液の中でも様々な活躍をしております。

A:水分をkeepできなくなる。

 タンパク質は水分を血液中に引っ張ってキープする役割があります。もしタンパク質が少なくなると血液中に水分をキープできないため、血管から水が漏れていきます。ホースをイメージしていただければ良いと思いますが、水やりをする時ホースから水が漏れていくと水やりができないと同じように、血管から水が漏れていくと心臓から送られた血液が全身に届かなくなります。

 ネフローゼ症候群では腎臓に必要な血液が届かなくなり、腎臓が栄養不足になり下手をすると尿を作る事が出来なくなります。体の老廃物を出せなくなるため、ネフローゼの状態をほっておくと透析という人工的に老廃物を出すような医療処置が必要になります。(病態にもよりますが。)

 

B:免疫力が下がる。

 実は免疫は、たんぱく質で出来ています。たんぱく質が尿から漏れるネフローゼ症候群は免疫を低下させます。ネフローゼ症候群ガイドラインという教科書みたいな本には免疫低下について強く言及していて、重症のネフローゼ症候群ではHIV/AIDSに匹敵するほど免疫が低下する事があります。

 

C:体が浮腫む

 Aに付随しますが、水をkeepできなくなった状態で漏れて出て行った水は皮膚の下や、肺やお腹の中に留まります。皮膚の下に溜まるとパンパンになります。中には皮膚に炎症を起こしたりする事もあります。それより怖いのが、肺に水が溜まる事で呼吸が苦しくなったりします。

 

 難しいのは、Aの場合は水が足りない状態で、Cは水は余っている状態である事で、厳格な専門医による体液管理が必要になります。

 

2:腎臓に何らかの異常がある事が問題。

 腎臓は必要な物を取り込んで、不要な物を出す臓器です。基本的には蛋白は尿として出ていきません。蛋白尿が出ていれば、それが腎臓のSOSの可能性がありますが、今回のお題であるネフローゼ症候群はその『漏れるはずのない蛋白』が大量に漏れている状態であり、腎臓に大きな障害が起きていると考えられます。

 

 腎臓の障害の原因としては微小変化型ネフローゼ、巣状分節性糸球体硬化症、膜性腎症、膜性増殖性糸球体硬化症、糖尿病性腎症、アミロイドーシスなど多岐に渡ります。(各疾患に関しては後日それぞれ記事にします。)

 

  原因を調べるには、問診に加えて採血、採尿、画像検査などを行いますが、最終的に腎生検という検査を行って診断するのが一番良い方法です。

 

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3:ネフローゼ症候群は怖い病気

 僕はブログで一貫として、不安を煽らないようにするというスタンスを保とうとしております。医者じゃないメディアが書くと結局『すぐに病院に行きましょう』って不安を煽ってばかりで、医療現場がそのせいで疲弊しているのを身をもって実感しているため、比較的安心なものは不安を煽らないようにしております。『もし忙しくて時間がないなら最悪amazonでこの試験紙を買って自分で検査しましょう』みたい情報提供も大事なのではないかとも思ってます。(医療行為ではないので自己責任ですが。)

 

 しかしながら、ネフローゼ症候群は自分の中では怖い病気だと思っています。1週間で身体がむくんで体重が5kgぐらい増えて、呼吸が苦しくて、尿が出ないとか泡立ちが強いみたいな事があれば迷いなく、病院受診で良いと思います。

 

 迷いがあるならamazonか薬局かなんかで試験紙でも買って調べてみても良いと思います。

www.amazon.co.jp

 

ネフローゼ症候群は比較的若い患者さんにも起きるため、このブログが患者さん本人に届く可能性があると思って今週はこのテーマにしました。稀な疾患ですが、やはり早期発見、早期治療が良い病気です。役に立てば幸いです。

 

 

*私のブログを研修医の先生方や他の専門の先生方もみて下さっているとの話を聞いたので、ガイドラインを添付しておきます。ちなみに無料です。 ありがたいですね・・・。

エビデンスに基づくネフローゼ症候群診療ガイドライン2014』

http://minds4.jcqhc.or.jp/minds/neph/neph2014.pdf

健康診断で血尿と言われたらどうすればよいか

前回は蛋白尿について2つ記事を書きました。

korokorokoro196.hatenablog.com

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今日は血尿について書きたいと思います。

 

ちなみここで言う『血尿』とは、見た目血尿にみえないのに顕微鏡でよくみると血が混じっている『尿潜血』の事を言います。血尿の原因は、腎炎、IgA腎症などの腎臓内科領域の疾患、尿路結石や膀胱癌などの泌尿器科領域の疾患、あるいは過度の運動によるものなどさまざまです。腎臓内科医としては腎疾患において『蛋白尿』と同じで『血尿』も腎臓のSOSの役割を担う事が多くあります。

 

1:本当に血尿なのかを確かめる。

健康診断で血尿を指摘されても、本当に血尿じゃない事があります。あくまで健康診断で行う尿検査は『簡便でざっくりした結果』を出すための検査です。尿検査にはより詳しく調べる事ができる尿『沈渣』という検査があります。

 

尿『沈渣』では実際の血液の成分の『数』と『形』を見る事が出来ます。健診のざっくりした検査で『潜血陽性』と出てしまっても実際『数』を数えてみたら無かったという事も多々あります。(ビタミンCは検査前は取らないようにしましょう。)

 

近くの開業医など医療施設で簡単に調べる事が出来るので確認しましょう。

 

また『数』だけではなく『形』も重要な情報になります。

 

腎臓という臓器は尿の通り道が細く、赤血球が壁にぶつかりながら前に進むため、結果的に赤血球がボコボコになって尿として出てきます。これを『変形赤血球』といいます。一方で腎臓よりも下流から出血した場合は変形せずに尿として出てきます。(厳密には変形する事もありますが・・・。)

 

血尿かを確かめるために『尿沈渣』の検査をする。

 

(ちなみに女性は生理の時期を外しましょう。)

2:腎臓内科または泌尿器科にかかる。 

 実は『血尿』はどこの専門科にかかれば良いか、医療関係者でもすら良く分からないというのが現状です。基本的には『腎臓内科』か『泌尿器科』です。 

http://www.matsunami.co.jp/senmonsinryou/img/jin_1.jpg

腎臓内科は『腎臓』をみます。上の図の豆みたいな臓器ですね。それに対して泌尿器科は『腎臓以外の尿路系』をみます。腎臓から出血しているか、腎臓以外から出血しているかで受診する診療科が変わります。(めんどくさいですよね、ゴメンナサイ・・・。)

 

どっちから出血しているかを判別するために二種類方法があります。

1:尿検査で蛋白尿があるか(+以上)をみる。
2:尿沈渣(試験紙よりも更に詳しく調べた尿検査)で赤血球に変形がないかをみる。

 

1については、腎臓になんらかの障害があれば血尿と一緒に蛋白尿が出て来る事が多いです。蛋白尿の記事でも伝えましたが、『蛋白尿1+以上かつ潜血1+以上』は基本的に腎臓内科受診で良いと思います。(早朝尿だとベスト!)大事なのでもう一回書きましょう。蛋白尿が出ている血尿は腎臓内科を受診。

 

2について前述の通り、腎臓の疾患であれば変形赤血球を認めます。変形赤血球があれば腎臓内科受診で良いと思います。蛋白尿が出ていなくても、変形赤血球があれば腎臓内科を受診。

 

逆に

①蛋白尿で出ていない

②変形赤血球が出ていない

場合は泌尿器科を受診する事になると思います。

 

実はこのプロセスは血尿のガイドライン(教科書みたいなもの)にしっかり記載されています。

 

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腎臓内科を診療する場合は、内科的疾患であるIgA腎症、血管炎、腎硬化症などが考えられるため、採血、採尿、画像検査などを行い、最終的に必要があれば腎生検で診断をつけます。

 

それに対して、泌尿器科を受診する場合は、尿路上皮癌や結石などが考えられるため細胞診という尿の検査や画像検査、強く疑う場合は最終的に膀胱鏡を行います。

 

大きな病院行ったほうが良いですかという質問をよくされます。これに答えは無いのですが、私個人の感想としては、専門医を標榜しているクリニック、つまり泌尿器科クリニック、腎クリニックみたいなクリニックであれば採血、採尿、細胞診、画像検査までは出来ると思いますので、大丈夫だと思います。

 

 

遠い、待ち時間の長い大病院に行くよりは、近くて、比較的待ち時間の短いクリニックをまず受診して、それでも精密検査が必要と判断すれば大病院を受診すれば良いと思います。

 

 

まとめると、

①かかりつけの内科で尿沈渣を測定する。

②結果に基づいて、必要であれば『泌尿器科』もしくは『腎臓内科』に紹介してもらう。

の流れが患者さんにとって一番スムーズだと思います。

 

健康診断で血尿を指摘されても、実際は血尿ではなかったり、治療が必要でない事もありますが、腎臓内科医としては『蛋白尿』と『血尿』が両方ある人は、放置すると若くして透析になるような病気が進行してしまい、手遅れになってしまう患者さんをそこそこ現場で見ているのでお忙しい中大変恐縮ですが、一度かかりつけの内科で『尿沈渣』を測定してみる事をおすすめします。

今まで好き勝手に不摂生してきた人を透析導入した話

つい最近透析導入した80歳越えの患者さん(腎臓が悪くなるまで不摂生な生活をしていた)が『若い人達の頑張りで頂いた命だから、人一倍元気にこっから人生楽しむし、できる範囲で社会に恩返しします。』って言ってついこの前退院しました。

*倫理的背景から事実をある程度元にフィクションにしてあります。 

 

僕は腎臓内科という透析を導入する立場でありながら、日本の透析医療の『自分で自分の健康を守る責任』と『社会が個人の健康を守る責任』のアンバランスさには疑問を感じております。

 

 

コメンテーターみたいに外から偉そうに言う人間ではなく、自分自身が身をもって働く事に意味を感じて腎臓内科になりました。 しかしながら、最終的には冒頭の患者さんみたいに、今まである種好き勝手して透析になるという私が疑問に思う『アンバランスさ』を持っている透析医療であっても、その方が透析で得た命で充実した生活(アウトカム)そして、ちょっとしたプラスアルファ(なくても良い)で社会貢献、そして大切なのは与えられた医療に対する『有り難み』があればまた違った世界が見えてくるのではないかと思います。

 

医療費圧迫を背景に『透析=悪』という構図が出来つつありますが、透析医療自体は素晴らしいと思っています。

 

透析医療には、透析になる前の予防医療、透析になった人の終末期医療、死生観、家族の死生観、生活習慣関連以外の遺伝疾患や炎症疾患などならずべきして透析になった方の配慮など現場にいて感じる問題意識は多岐に渡ります。

 

数字では見えない世界が医療現場にはいっぱいあります。とはいえ、医者はマクロな数字を気にせず半径5mの正しさで医療をしているのも事実です。

 

うまくバランスをとる事の大切さを痛感した最近の出来事でした。

 

*この文面は、あくまで不摂生な生活からなるべくして透析になったケースから考えておりますが、遺伝疾患や炎症疾患でならずべくして透析になってしまった方に『有り難み』『社会貢献』を強迫観念の形で強要するものではありません。

蛋白尿を見つけたらどうすれば良いか?

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『蛋白尿があればすぐに病院を受診して下さい。』

 

 責任をとる事が出来ない生半可なウェブメディアはそう言うでしょう。確かにメディア側のそうする気持ちは分かります。医療系のウェブメディアで間違いを1つでも犯したら訴えられる可能性があり、仮に1万人に読まれる記事でそのリスクを回避しようとすれば、0.01%でも可能性があれば病院に行きなさいと言わなければなりません。結局メディアは責任を取れないのです。

 

 しかし、働き盛りの世代は、病院に簡単に行けるほど暇じゃありません。しかも、高齢化社会で病院は高齢者で一杯。待ち時間は平気で一時間、二時間かかってしまいます。

 

 また日本では慢性腎臓病という腎臓の機能が落ちた患者が1000万人いると言われるのに、腎臓内科医は日本では未だマイナーな診療科であり4000人くらいしかいません。地域医療の中である大学病院に腎臓内科がない県も多くあります。そんな中で、蛋白尿の患者全てが腎臓内科医のところに殺到したら大変な事になります。

 

 近くの開業医に行けばと良いという案もありますが、開業医の先生方は風邪の診療や高血圧、糖尿病の診療から緊急性のある患者を中核病院に送る診療、在宅医療など多岐に渡ってみており、そんな中でマイナーな診療科である腎臓内科の蛋白尿の事をしっかり把握されている先生方は相当優秀かつ勤勉で頭が上がらない方というのが僕の正直な気持ちです。

 

 結果、多くの患者さんが蛋白尿を経過観察され、しっかりしたアセスメントをされないまま重症化し、やっと地域の中核病院の腎臓内科に運ばれてきます。

 

 こうした現状の中でも私自身としては蛋白尿の診療がもっと多くの人に行き渡るべきだと思うし、それによって腎臓の病気を早期発見でき、透析になるような人が減れば良いと思ったので、今日は腎臓内科の目線から蛋白尿をみつけたらどうするかについて書きたいと思います。

 

蛋白尿そのものについては下記へ。

 

korokorokoro196.hatenablog.com

 

 蛋白尿の診療の流れは意外とシンプルです。なので、この記事で皆様が自分自身で勉強してしまえば良いと思います。下の図をみて下さい。

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この図はガイドラインという診療の王道を記した教科書みたいな所に載っている図で、日本腎臓学会が公式に発表している蛋白尿の診療の流れです。

 

この流れにおいてポイントは3つあります。

 

1:異常値が出たら、早朝にもう一度測定します。

 健診のデーターが本当に異常か確かめる必要性があります。というのは起立性蛋白尿といって、昼に身体を動かしている時に蛋白尿が出てしまう事がありこれは明らかな異常所見ではありません。なので『朝』にもう一度測り直してください。

 

 おそらく、開業医の先生の所に行くと、じゃあ朝の尿を持ってきてくださいと言われると思うのですが、二回も診療所に行くのは働く社会人にとってキツイと思うので、初診の時に、早朝に採った尿をペットボトルでもなんでも良いので入れて持っていき『今日早朝の尿を持ってきました。』と言えばその日に測ってくれると思います。

 

 しかし、世の中にはそんな時間を取る事も出来ない多忙の方が一杯います。医者は『命に関わる事なので仕事を休んで下さい。』と言いますが、僕個人としては、仕事を休めない社会人の気持ちもすごく分かります。実際、僕も歯周病予防の歯医者に全然行けてません。

 

 医者として失格かもしれませんが、どうしても医者に行く時間がないという人にはamazonで売っている尿蛋白試験紙を使って自分で測定して下さい。もしかしたら薬局で売っている可能性があります。

www.amazon.co.jp

 

この試験紙で測定して尿蛋白1+以上だったら、ご多忙の所申し訳ないのですが病院に行って下さい。病院で正しく測定する事を医者としてはおすすめはしますが、病院に行く暇がないという理由で放置されるぐらいなら市販の試験紙に委ねるのも大切だと個人的には思っております。

 

2:女性の方は生理を避けて下さい。

 生理中に尿検査をすると、間違って血尿と判断されてしまいます。蛋白尿と共に血尿が出ていると腎臓内科としても診療するモードが変わってしまいます。本当は血尿じゃないのに、血尿と判断される事により余分な検査を受ける事になるので、生理中は尿検査を避けてください。

 

3:腎臓内科への紹介基準を患者さん自身が覚えて下さい。

 先ほど申し上げた通り、開業医の先生はとても忙しく、マイナーな腎臓内科の蛋白尿の診療に時間をかける暇などないのが現状です。また現代の医学情報は膨大になっており全てを理解する事など到底無理です。私は腎臓内科医ですが、他の領域になると自信を持って診療を進める事が出来ない事も多くあります。情けない限りではありますが、例えばポリープの診療や歯周病の診療なんかに関しては正直胸張って診療出来ません。

 

 蛋白尿診療において、かかりつけ→腎臓内科専門医に紹介する基準は決まっています。以下の3つが基準になります。

A:蛋白尿2+ or 0.5g/gCrの時。
B:eGFR50以下の時。
C:蛋白尿1+及び血尿1+の時。

 患者さん自身が自分の検査データーをみて、自分が腎臓内科専門医に紹介されるべきかを判断して下さい。もし該当されるようであれば、担当の開業医の先生に先ほどの載せた図を見せて下さい。もう一回貼っておきましょう。

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 この時大切なのは、ちょっと申し訳無さそうな顔をして『友達の腎臓内科の先生が2012年の日本腎臓内科のガイドラインの蛋白尿診療に関しての写真を送ってくれて・・・』みたいな適当な嘘をつく事です。医者にとって、患者さんに『知らない』という事実を突きつけられる事はとても怖い事です。何年も何十年も培ってきた信頼関係があるのであれば今後も構築し続けるべきだと私は思います。こんな事をいうと色んな人から怒られますが、人生において時には嘘をついたほうが得な事があると私は思います。こういう時は適当に嘘をついて無駄な損失は避けましょう。

 

 

 その後腎臓内科の所に行ったら、採血、採尿、画像検査を行います。しかしながら、それでもよくわからなかったり、どのくらい腎臓がやられているのかを調べる必要がある事があります。その際には、「腎生検」を行います。下記の記事などは端的でわかりやすいと思います。

 

korokorokoro196.hatenablog.com

 

 外来を受診する前に読んでおいたほうが話が理解が早くなり、余った時間でいろんな質問を医師にすることができるようになります。

 

 蛋白尿は腎臓のSOSです。私の実感として働き盛りの50-60歳の方が検診で指摘される事が多く、仕事で病院なんて言ってられないような人ばかりです。なので、空いている時間にこの記事を読んで、効率よく診察を受けて早期診断、早期治療に結びつけて透析になるような人が減れば良いなと思います。