千葉県の腎臓内科医のブログ

透析医療の現状を疑問に思い腎臓内科医になる事にしました。

イギリスと日本の保険制度の違い

5年生の時にプラハの学会で知り合ったイギリスの家庭医の所に研修に行った。イギリスと日本の医療の仕組みは似ていると言われる。全国民が個人収入の影響をほとんど受けずに医療を受ける事が出来るという点で類似していると言われている。しかし、イギリスで実習した時に多少なりと違いと感じた。この違いを明らかにする事で日本の問題点を外から見る事が出来ると感じた。

 

 

 

そのままそう思った事を忘れ2年が経ち、昨日たまたま行った勉強会でイギリスのNHS:national health serviceいう制度についてを学ぶ機会があったためせっかくの機会であったためイギリスの保険制度についてまとめてみようと思う。

 

 

 

日本、イギリス、アメリカを比べた時、完全に民間による保険を制度化しているのがアメリカであり自己負担額10割。日本とイギリスが公的機関が保険制度を担っている。日本は自己負担額3割、イギリスはなんと自己負担額がない。

 

 

この点で日本とイギリスは公的機関が保険制度を担っているという点で類似していると言えるが、その中で相違点が二つある。日本は

 

①自己負担額が存在する事。

②『保険者』と『提供者』が違う事。

 

①自己負担額が存在する事。

3割負担するか負担がないのかでは、似ているようで大違いである。そもそも市民の感覚も違うだろう。私が街を歩いていて、道に迷ったら警察に道を聞くかのように、火事があったら消防車を呼ぶかのように、病気になれば病院に行く。恐らくイギリス人にとって医療が社会的負担という考え方はあまり存在しないと思う。それは日本人が警察とか消防署に対して社会的負担と思わないかの如く。この意識の差には大きな違いがあると思われる。

 

②『保険者』と『提供者』が違う事。

イギリスの場合はNHSがヘルスケア計画を作成して、GPというイギリスのかかりつけ医をその計画に組み込むが可能である。簡単に言うと、NHSという雇用主がGPを雇用している形をとっている。保険制度もNHSが担っている。

 

それに対して、日本の場合は保険者はざっくり『健保』『国保』『後期高齢者保健』があると考えてよい。(厳密には違う。)それに対して『提供者』は病院であり、病院が医師を雇っている。

 

健保の収入→社員からの徴収50%、会社からの徴収50%

国保の収入→税金(自治体からの徴収)40%くらい、残りは住民税と国からの税金(国に介した、けんぽからの補正)

 

 

こう書くと複雑にみえるが、ざっくり言うと、働いている人はあんま病気にならないので、収入(in)に対して支出(out)が少ない。そのため余ったINを国保後期高齢者に回しているという構造なのである。

 

 

『保険者』と『提供者』が同じであるイギリスには、

利点:管理費、営業費の削減、価格交渉の無駄削減。

短所:監視の目がなくなる事でモラルハザードのリスクが上がる。

 

例えば50万の手術に対して、

日本の場合、『保険者』にとって50万は支出(OUT)であり、『提供者』にとっては(IN)になる。具体的には保険団体と病院の間にせめぎ合いが生じる。そのため生じる、価格交渉、営業費、管理費による無駄は存在する。

 

イギリスの場合、収入(IN)が『保険料』 であり、支出(OUT)が『医療費』である。もし本気を出して悪い事をしようと思ったら、治療が必要な人に治療をしなければOUTが減る。競合相手もおらず、均衡関係がないため一度不正が行われると止める事は出来ない。キャメロン首相の時に行われたNHS改革時にこの点について大きく議論されたようだ。

この問題に対してLINksという国民の意見を集めて制度の欠点を補う対応策をたてるネットワークが存在する。

 

 

両者のシステムは当初高い評価を受けていた。が、ここ数年で問題点が出現した。

 

①医療技術の進歩

数十年前には抗生物質も数種類しかなく、今みたいに高齢者に高度な手術を行うことが出来なかった。それが、医療技術の進歩により医療が人々の需要に応える事ができるようになった。それにより医療費は増大した。日本もイギリスもそれに応えるだけの経済成長をしておらず、保険制度上のINの不足、OUTの増加により苦しい状況を強いられた。

 

②多様化

制度が出来たのは半世紀も前。当時に比べて、人々が様々な生き方をするようになった。都心と田舎が存在し、移民も存在して、貧富の格差が生じた。保健サービスが全ての国民の希望に応える事は困難になった。また治療の方法や考え方も千差万別で国が管理する事が困難になった。イギリスで地方分権を行い解決を図った。

 

 

ここまで学んだ保険についてを記した。また時間ができたら、より深いところまで調べて書いてみようと思う。