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IKURO MORI Official Blog

透析医療の現状を疑問に思い腎臓内科医になる事にしました。

病院の赤字を防ぐために必要な考え方

最近、保険制度、医療政策について勉強している。その中で病院経営について考える事が多くなったためすこし頭の中をまとめる意味で一つ記事を書いてみようと思う。

 

 

 

全国の病院はどこも赤字で経営に苦しんでいる。基本的に病院の支出の5-6割は人件費で消えていく。病院の赤字の解消のために人件費を削る事は常套手段であり、その一環として残業させたり、時間外労働を強いるのは経営上非常に有効な手段であると私は考える。

 

 

こうなってしまうのは止むお得ない背景が存在する。

 

 

病院のお金の流れを大まか考えると

 

収入=『患者単価』×『患者数』

支出=『材料費』+『人件費』

 

と考えてよいだろう。

 

『材料費』→消費税上昇

『患者単価』→医療費削減

『人件費』→社会的に医療者不足であり、売り手市場である。

 

 

この社会背景から病院経営は現在とても苦しい状況にある。 そのしわ寄せは残業や時間外労働という形で医療者に押し付けられる。

 

 

 

 病院が儲かれば、人を増やす事が出来る余裕が生まれる。すると残業や時間外労働の負担が減っていき離職者も減り、また子持ちの医療スタッフが働きやすくなることでより人数が充実していくだろう。

 

 

更に病院が儲かればより多くのスタッフを雇う事ができ、診療の効率を上げて待ち時間を減らす事ができる。すると患者の病院に行く沸点が下がり、より多くの疾患の早期発見をする事ができ、予後が比較的悪くない状態で患者さんの治療を開始する事ができる。これは医療費の観点から社会的に非常に意義がある。

 

 

 

経済でお金に余裕があり、高齢者が少なかった昔と違い、状況が厳しくなった今、『病院は金じゃない!』とか『儲けちゃいけない!』というのは全くの理想論であると思う。その理想論の被害を被っているのは、患者さんであり、医療者であり、社会であるという考えをある程度は持つ必要はあるのではないかと思う。

 

 

病院経営の重要性は今後の日本のためにしっかり考える必要がありそうである。今回は自分なり解決策を考えていこうと思う。

 

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現段階で一番アプローチをかけやすいのは『患者数を増やす事』だと思う。これを分解すると

1効率を上げて時間あたりの医療の提供を増やす事=『生産性』の増加

2医療の質を上げて評判を上げる事=『質の向上→評判の向上』

と考えてよいだろう。

 

 

1『生産性』の増加

この課題の答えは、『選択』と『集中』にあると思う。

 

実際働いてみて思った事は病院では『何でも屋さん』が評価される。しかし、その風潮のせいで効率がかなり下がっている。入院計画書を書いたり、患者さんの搬送を医師がすると良い医師だと言われスタッフからの評判が上がる。しかしこれは非常に勿体なく、病院は基本大半が医師の診療行為によって利益を上げる事が出来るため、医師じゃなくても出来る仕事は他の人に極力任せて、どんどん診察したり、検査したり、処置をした方が、結果職員の給料も上がり、新規の職員を雇えて負担を減らす事が出来るはずである。

 

 

これはもう一段マクロに考えても同じ事が言える。例えば病院の方針という観点から考えてみよう。

 

 

病気に対するアプローチには4つの段階がある。

 

『予防』→『検査、診断』→『治療』→『慢性管理』

 

 

『医療戦略の本質』では総合病院を始めとした多くの病院ではこの4つの段階に対してのアプローチを一つの病院が全て行う事に対して効率の悪さを指摘している。例を挙げて具体的に言うと

 

・診断が付いていない人に対して、ゆっくりと全身検索してしっかり検査を行い診断をつけるという段階

 

・診断が付いている人に対して、手術や抗がん剤、透析を行う段階

 

・リハビリや社会復帰を促す段階

 

を一つの病院が担おうとすると、あれもこれも用意しなければならないから設備投資に物凄くお金がかかる。そのくせ人を雇う財力もないため、一人の医師が様々な範囲の作業を行わなければならないため効率が上がらない。

 

 

 

対して仮に、『私たちの病院は診断の付いた患者さんに対しての治療に特化します』と病院側が打ち立てる事が出来ると、CTは今までよりは少なくて済むし、放射線技師の数も少なくて良い。医師は初診の負担が減るため、手術や内視鏡などに集中できる。毎日同じような処置をすると一週間に一回程しかしない処置とでは、質、時間が格段に変わる。患者さんもこの病院に行けばこの治療を受ける事が出来ると分かりやすい。地域の開業医もこの疾患はこの病院に送ればいいと分かりやすいため連携も上手くとれる。『競合』→『協力』に変われば、情報開示もより行いやすく検査の二度手間も防ぐ事ができる。各段階を役割分担して、アプローチをかければ、病院一人一人から社会全体にかけて、効率が良くなるだろう。

 

 

 

しかし、実際の病院の形態はどうだろうか。

 

 

大抵の病院の理念が『患者さんのためなら何でも出来ます』といった類の理念を掲げる。 

 

すると必要に迫られる事の少ないサービスまで用意する必要があるため設備投資、人件費がかさむ。

 

 

更に患者さんも、総合病院がどういう病院かが分からないけど、取り敢えず行けばなんとかなるだろうという気持ちでそちらに行きがちになる。

 

 

大学病院のような所に風邪の患者さんが来てしまったり、大きな病院に高血圧のみの患者さんが入院してしまったりする。これは患者さんが悪いのではなく、『その病院がどういう病院か』という情報を病院側が上手く提示できないのが一番の問題ではないかと考える。

 

 

手術が物凄く得意な心臓外科の先生が風邪をみるよりも、総合内科の先生が風邪を見た方がよっぽど質が高く、効率が良いのではないかと思う。

 

 

 

効率を上げるためには『選択』と『集中』が必要であるだろう。そしてできない事は綺麗に他の病院に任せる事は今度の病院経営に必要な考えになるだろう。

 

 

2『質の向上→評判の向上』

実はこの話は1と非常にかぶる。医療の質を上げるのは医師の効率も関係するが、それ以上に患者教育に依存する部分が多い。退院した後、どういった事に気をつけて生活するべきなのか、もし何かが起きた時にどのような社会的資源を利用するべきか、そもそも自分がかかっている疾患はどういう疾患なのかを患者さんが勉強する事は非常に大切になる。そのために看護師やソーシャルワーカーの質の高さはとても大切である。不安を取り除き、患者さんの悩みを聞き、アドバイスを与える事は看護師さんの得意分野である。

 

 

 

そうなってくると看護師さんやソーシャルワーカーの自分が勤務している病院の位置付けに対しての理解は非常に大切になる。

 

 

手術後の患者さんに対するアドバイスと慢性期の患者さんに対するアドバイスは違う。どちらかに特化されていた方が理解を深めやすい。

 

 

自分がスタッフとして何を求められているか医療者として何を提供する事が求められているがわかった方が働く方も働きやすいだろうし、質も上がる。

 

 

結果、評判が上がり『患者数』が増えるだろう。

 

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オペレーションシステムで名声が高いのは我々が馴染み深い『トヨタの分業制』である。一つの車を作るのに、ドアの取り付けの名人、タイヤの取り付けの名人、設計の名人にその仕事を特化させて取り組みをさせるオペレーションシステムは学ぶ事が多くあると思う。

 

 

 

こうやって発言すると『人と車は違う!』と怒られてしまうが、『違う事を指摘する』の同時に『似ている部分を見つけ出す事』も必要なのではないかと思う。

 

 

 

とりあえず病院経営について、最近学んだ事を書いた。実際の経営はこんな簡単な話ではないと分かりながらも、とりあえず基本的なところをざっくりまとめてみた。

 

 

他にも混合診療や保険制度については違う記事について書こうと思う。

 

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