千葉県の腎臓内科医のブログ

透析医療の現状を疑問に思い腎臓内科医になる事にしました。

人工知能で医者はいらなくなるのか その1 〜5分で分かる人工知能の現状〜

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最近医療現場でも「人工知能で医者はいらなくなる」という諸説が耳に入るようになってきました。結論としては個人的には人工知能のおかげで医者の仕事(特に内科医)はどんどん増えると考えておりますが、その話は置いといて人工知能が現状でどのような能力がありどう医療現場で使用されるかについて調べてみました。

 

前置きとして私は専門家でもなくただの医者であり、非専門家での調査であるため知識の整合性に関して粗い部分があると思いますが、非専門家だから書ける読みやすさでこの記事を書きます。

 

まず、人工知能が急激に進歩したのはここ10年の話と考えられています。そして世間で騒がれ始めたのが、2011年にIBMのWatsonという人工知能がクイズ番組で歴代王者をコテンパンにしたところから始まります。

 

 

人工知能の力を急激に進歩させたのが、ディープラーニングという技術です。詳しくは本を読んでいただけるといいと思うのですが、粗い例えで説明したいと思います。

 

いきなりですが私は天然パーマです。天然パーマーにも色々あります。おしゃれパーマのような天然パーマもあればモジャモジャで汚らしい天然パーマもあります。

従来の人工知能では一つ一つの天然パーマを読み込ませて天然パーマである事を教えなくちゃなりませんでした。この場合人工知能に教えていないような天然パーマ、例えばもじゃもじゃなのにおしゃれな天然パーマ、ひたすら右にまがる天然パーマを天然パーマと認識できませんでした。

 

しかしディープラーニングを使用すれば、おしゃれ度100の天然パーマからおしゃれ度10の天然パーマ、モジャモジャ度100の天然パーマからモジャモジャ度10の天然パーマをとりあえずひたすら無数に読み込ませる事でその特徴を勝手に抽出して規則性を見出して「なんとなく髪がくねくねしてるのが天然パーマなんだな」という事を勝手に見出せるようになりました。

 

人工知能が与えられない情報に対して過去の経験や規則性から推測していく事が可能になった」というのがディープラーニングのすごい所で人工知能の躍進につながる結果となりました。

 

 

その技術が現在、放射線領域で使用されようとしています。2015年にIBMはMergeという300億ほどのレントゲン、CT、MRIの画像解析をしてきた会社を買収しました。

jp.techcrunch.com

 

先ほどの天然パーマのように、人工知能に消化器系の急性疾患である虫垂炎イレウスの画像を大量に読み込ませて異常のあるCT画像をイレウスと認識して私達医師に教えてくれるようになります。

 

まだ開発段階ではありますが、日本では心臓MRI人工知能を搭載したサービスをメディアマートが提供する段階にチャレンジしています。

Watsonを活用したハッカソン、最優秀賞はメディアマートの「心臓MRI自動診断支援サービス」 - クラウド Watch

 

ちなみに画像認識では2015年に人工知能が初めて人間よりも精度が高い事が証明されました。これからどんどん画像認識に人工知能が参入する事は恐らく間違いないと思われています。

 

画像診断に限らず、他の領域でも人工知能が参入しております。2016/6にはアメリカの糖尿病学会が人工知能を使って、糖尿病患者のリスクを評価して健康を促進していく事を表明しました。糖尿病患者の行動パターンやリスクのデーターを大量に集めて人工知能を使って重症化予防に取り組んでいくようです。

 

 

さて、今まで良い事ばかり書いてきましたが、壁も多くあります。先ほど申し上げましたが、人工知能は人間の成長と似たようなプロセスで成長していきます。人間でいう「両親の下で育ち、保育園に行き、小学校に行き、中学校に行く」というようなプロセスで人工知能を育てていかなくてはなりません。保育園に行く前の子供に大量の医学論文を読ませても永遠に理解できないのと同様に、人工知能にもある程度の教育機関が必要です。いくらディープラーニングが優れているとはいえ、人間の医学の世界で例えると医療の言葉がある程度分かるようになる国家試験後の医学生ぐらいになるまでは地道なつまらない暗記が必要です。その段階を超えると人工知能は一度覚えた事を二度忘れない1日何十冊の参考書と何百本の論文を読む無敵なスーパードクターに変貌します。

 

 

まず、言葉(日本で使うなら日本語)を覚えさせて、医学用語を覚えさせて、統計なら統計特有のルールも教えなくてはなりません。まだまだ人工知能の現状は「赤ちゃん」のような状態なのです。

 

 

2016年に白血病の治療を人工知能で行った例が東大で報告されました。

 

yomidr.yomiuri.co.jp

 

 

これは遺伝子解析に特化した人工知能を使用した一例になるわけですが、この人工知能はある種、遺伝子に関する情報にのみ対応できる人工知能なのだと思います。遺伝子に関して私は詳しくありませんが、この領域は「揺らぎ」が少ない領域なのではないかと考えております。

 

この「揺らぎ」というのは、例えば、「頭がいたい」というが日本語で「頭痛」という意味であったり「悩む」という意味であったりすると同時に、また「頭いてぃー」という若者言葉でも表現できたりする側面の事だと思われます。

 

 

人工知能が本気で医者の仕事の代わりに対応するためにこの「揺らぎ」を大量に暴露する必要があります。そしてその暴露の前に誰かが教育しなくてはいけません。

 

3歳ぐらいの子供は花を指さして「これなーに?」という疑問を親にぶつける訳ですが、人工知能はその疑問を持つ事も質問をする事もできないため、一つ一つ初期段階では誰かが教育しなくてはなりません。

 

(そう思うとディープラーニングの次の革命的な技術は「好奇心」や「質問力」なのかもしれません)
 
 やはり人工知能が医者の代わりになるのはだいぶ先にはなりそうです。(違う記事で詳しく医者の仕事と人工知能の役割について触れたいと思います。)
 
 
 
さて、Antaaというベンチャー企業IBM人工知能がWatsonを使った医師の診療サポートサービスを今後展開するようです。

 

 

Antaaは現在、スマートフォンアプリを使って、そこに登録された医師達のコミュニケーションの場を提供しております。(試験段階です。)臨床の現場で困った事を気軽に投げかけると、登録している医師の誰かが答えてくれる場で、例えば「鎖骨骨折は入院適応ですか」という質問を内科の医師が投げかけると、整形外科の医師が「入院する適応は・・・。」という風に教えてくれます。

 

専門家にとっては当たり前の事が、非専門家にとって難しい事が多々ある医療現場においてこのような気軽に聞けるプラットフォームがあまりなかったため私も愛用してます。

 

ちなみにアドバイスに対してそれを目の患者に患者に還元するかは自己判断です。あくまでインターネットや論文の情報を参考に私達が判断していくのと同じです。

 

このプラットフォームを人工知能watsonは上から覗いています。医師と医師の間で行われるコミュニーケーションを元に、パターンや規則性を見出して、頻回にされる質問に関しては即座に答えてくれるようになります。先ほどの鎖骨骨折の質問を他の誰かがした時は即座にWatsonが答えてくれます。

 

 

上手くいけば医師達の質問とともにAntaaのWatsonが育っていき、いずれはあらゆる質問に即座に答えてくれるようになります。イメージは物凄い天才医師の力を借りながら現場の生身の医師が判断していくような診療スタイルになっていくと思われます。

 

 

まだ赤ちゃんのWatsonを医師達のプラットフォームを通じて育てていくイメージです。私はこのサービスが浸透すれば、間違いなく医者の診療スタイルは変わると思います。

 

 

しかし、それでも私は冒頭でも医者の仕事が人工知能に代えられるような事は当分無いと思います。むしろ増えるぐらいだと考えています。その事については次回の記事で触れたいと思います。

 

korokorokoro196.hatenablog.com

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