千葉県の腎臓内科医のブログ

透析医療の現状を疑問に思い腎臓内科医になる事にしました。

蛋白尿を見つければどうすれば良いか?

『蛋白尿があればすぐに病院を受診して下さい。』

 

 責任をとる事が出来ない生半可なウェブメディアはそう言うでしょう。確かにメディア側のそうする気持ちは分かります。医療系のウェブメディアで間違いを1つでも犯したら訴えられる可能性があり、仮に1万人に読まれる記事でそのリスクを回避しようとすれば、0.01%でも可能性があれば病院に行きなさいと言わなければなりません。結局メディアは責任を取れないのです。

 

 しかし、働き盛りの世代は、病院に簡単に行けるほど暇じゃありません。しかも、高齢化社会で病院は高齢者で一杯。待ち時間は平気で一時間、二時間かかってしまいます。

 

 また日本では慢性腎臓病という腎臓の機能が落ちた患者が1000万人いると言われるのに、腎臓内科医は日本では未だマイナーな診療科であり4000人くらいしかいません。地域医療の中である大学病院に腎臓内科がない県も多くあります。そんな中で、蛋白尿の患者全てが腎臓内科医のところに殺到したら大変な事になります。

 

 近くの開業医に行けばと良いという案もありますが、開業医の先生方は風邪の診療や高血圧、糖尿病の診療から緊急性のある患者を中核病院に送る診療、在宅医療など多岐に渡ってみており、そんな中でマイナーな診療科である腎臓内科の蛋白尿の事をしっかり把握されている先生方は相当優秀かつ勤勉で頭が上がらない方というのが僕の正直な気持ちです。

 

 結果、多くの患者さんが蛋白尿を経過観察され、しっかりしたアセスメントをされないまま重症化し、やっと地域の中核病院の腎臓内科に運ばれてきます。

 

 こうした現状の中でも私自身としては蛋白尿の診療がもっと多くの人に行き渡るべきだと思うし、それによって腎臓の病気を早期発見でき、透析になるような人が減れば良いと思ったので、今日は腎臓内科の目線から蛋白尿をみつけたらどうするかについて書きたいと思います。

 

蛋白尿そのものについては下記へ。

 

korokorokoro196.hatenablog.com

 

 蛋白尿の診療の流れは意外とシンプルです。なので、この記事で皆様が自分自身で勉強してしまえば良いと思います。下の図をみて下さい。

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この図はガイドラインという診療の王道を記した教科書みたいな所に載っている図で、日本腎臓学会が公式に発表している蛋白尿の診療の流れです。

 

この流れにおいてポイントは3つあります。

 

1:異常値が出たら、早朝にもう一度測定します。

 健診のデーターが本当に異常か確かめる必要性があります。というのは起立性蛋白尿といって、昼に身体を動かしている時に蛋白尿が出てしまう事がありこれは明らかな異常所見ではありません。なので『朝』にもう一度測り直してください。

 

 おそらく、開業医の先生の所に行くと、じゃあ朝の尿を持ってきてくださいと言われると思うのですが、二回も診療所に行くのは働く社会人にとってキツイと思うので、初診の時に、早朝に採った尿をペットボトルでもなんでも良いので入れて持っていき『今日早朝の尿を持ってきました。』と言えばその日に測ってくれると思います。

 

 しかし、世の中にはそんな時間を取る事も出来ない多忙の方が一杯います。医者は『命に関わる事なので仕事を休んで下さい。』と言いますが、僕個人としては、仕事を休めない社会人の気持ちもすごく分かります。実際、僕も歯周病予防の歯医者に全然行けてません。

 

 医者として失格かもしれませんが、どうしても医者に行く時間がないという人にはamazonで売っている尿蛋白試験紙を使って自分で測定して下さい。もしかしたら薬局で売っている可能性があります。

www.amazon.co.jp

 

この試験紙で測定して尿蛋白1+以上だったら、ご多忙の所申し訳ないのですが病院に行って下さい。病院で正しく測定する事を医者としてはおすすめはしますが、病院に行く暇がないという理由で放置されるぐらいなら市販の試験紙に委ねるのも大切だと個人的には思っております。

 

2:女性の方は生理を避けて下さい。

 生理中に尿検査をすると、間違って血尿と判断されてしまいます。蛋白尿と共に血尿が出ていると腎臓内科としても診療するモードが変わってしまいます。本当は血尿じゃないのに、血尿と判断される事により余分な検査を受ける事になるので、生理中は尿検査を避けてください。

 

3:腎臓内科への紹介基準を患者さん自身が覚えて下さい。

 先ほど申し上げた通り、開業医の先生はとても忙しく、マイナーな腎臓内科の蛋白尿の診療に時間をかける暇などないのが現状です。また現代の医学情報は膨大になっており全てを理解する事など到底無理です。私は腎臓内科医ですが、他の領域になると自信を持って診療を進める事が出来ない事も多くあります。情けない限りではありますが、例えばポリープの診療や歯周病の診療なんかに関しては正直胸張って診療出来ません。

 

 蛋白尿診療において、かかりつけ→腎臓内科専門医に紹介する基準は決まっています。以下の3つが基準になります。

A:蛋白尿2+ or 0.5g/gCrの時。
B:eGFR50以下の時。
C:蛋白尿1+及び血尿1+の時。

 患者さん自身が自分の検査データーをみて、自分が腎臓内科専門医に紹介されるべきかを判断して下さい。もし該当されるようであれば、担当の開業医の先生に先ほどの載せた図を見せて下さい。もう一回貼っておきましょう。

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 この時大切なのは、ちょっと申し訳無さそうな顔をして『友達の腎臓内科の先生が2012年の日本腎臓内科のガイドラインの蛋白尿診療に関しての写真を送ってくれて・・・』みたいな適当な嘘をつく事です。医者にとって、患者さんに『知らない』という事実を突きつけられる事はとても怖い事です。何年も何十年も培ってきた信頼関係があるのであれば今後も構築し続けるべきだと私は思います。こんな事をいうと色んな人から怒られますが、人生において時には嘘をついたほうが得な事があると私は思います。こういう時は適当に嘘をついて無駄な損失は避けましょう。

 

 

 その後腎臓内科の所に行ったら、採血、採尿、画像検査を行います。しかしながら、それでもよくわからなかったり、どのくらい腎臓がやられているのかを調べる必要がある事があります。その際には、「腎生検」を行います。下記の記事などは端的でわかりやすいと思います。

 

korokorokoro196.hatenablog.com

 

 外来を受診する前に読んでおいたほうが話が理解が早くなり、余った時間でいろんな質問を医師にすることができるようになります。

 

 蛋白尿は腎臓のSOSです。私の実感として働き盛りの50-60歳の方が検診で指摘される事が多く、仕事で病院なんて言ってられないような人ばかりです。なので、空いている時間にこの記事を読んで、効率よく診察を受けて早期診断、早期治療に結びつけて透析になるような人が減れば良いなと思います。