千葉県の腎臓内科医のブログ

透析医療の現状を疑問に思い腎臓内科医になる事にしました。

慢性腎臓病とは? 〜なぜ医者は腎臓が60点以下になると騒ぎ始めるのか〜

ブログを移転しました。5秒後に移転先記事に移動します。

今日は慢性腎臓病の話をします。慢性腎臓病とは一般の方々向け用の言葉を使うと【100点満点の腎臓が60点以下になった状態】を言います。(正確な定義は他でググって下さい。)

 

僕のブログでは腎臓は

①体に必要な物を出ていかないようにする。

②体に必要ない物を出す。

という2つの役割をしているという説明をしていますが、その腎臓が全く機能しなくなると必要な物が抜けていったり、不要な物(毒素や不要な水分など)が体に溜まってしまいます。最終的には透析をしなければ生活をできなくなったり、生命を保てなくなるような状況になってしまいます。では実際、腎臓が何点以下になると透析が必要になると思いますか?

 

 

実は15点くらいになるまで自分で気づくような症状が出ないことが多く、5-10点ぐらいまでは透析がなくても生活が出来てしまいます。腎臓はしぶとい臓器なんです。

 

では今日の本題は『〜なぜ医者は腎臓が60点以下になると騒ぎ始めるのか〜』という話です。よく医学生の方や初期研修医の先生に質問すると、『透析になるリスクが上がるからです。』と答えます。それも正しいのですが、それと同じくらい、いやもっと大事な事があります。

 

下の図をみて下さい。ちなみにこれらの図は2004年にアメリカのNew England Journalという世界でも有名な論文を発表する雑誌から発表された論文で紹介された結果です。

(ちなみ研修医でも上の先生と意見が食い違った時に『New England Journalに載ってました』というと少し怯むぐらい有名な医学情報が詰まっているイメージを持って頂けると幸いです。)

 

横軸が先程から私が言っている『腎臓の点数』でeGFRという採血の項目です。(厳密には違います。)

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Aの図は『腎臓の点数が60点を切ると何らかの疾患で死亡する確率が点数が60点以上の人と比べて何倍になるか』をしめています。

 

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Bの図は『『腎臓の点数が60点を切ると心筋梗塞脳梗塞になる確率が点数が60点以上の人と比べて何倍になるか』』をしめしています。

 

 

みていただけるとわかりますが、『腎臓の点数が下がっている人は何らかの疾患で死亡する確率や心筋梗塞脳梗塞になる確率が上がる』事が分かります。

(ちなみに、これは何故腎臓が悪くなったかという話とも関連して、糖尿病の患者さんは腎炎の患者さんと比べて心筋梗塞脳梗塞になる確率が高いと言われております。)

 

次に紹介するのは、日本の研究です。

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左のAの図をみて下さい、CKDというのは慢性腎臓病、つまり腎臓が60点以下の状態の事です。CKDの状態だと12年の間に心筋梗塞などの病気になる可能性が35%ぐらいなのに対して、CKDではない状態の人は12%程度にとどまります。女性も同様の結果です。

 

右のBの図も『CKDの方が心臓の病気や脳の病気なりやすい』事を示しております。

 

 

以上をまとめると、『腎臓の点数が60点を切ると様々な病気になるリスクが大幅に増える』という研究結果が出ているため、腎臓60点以下の人には栄養指導をしたり、行動変容を促したり、薬物加療をします。

 

不安を煽るようなデーターばかり示しましたが、なんと日本には慢性腎臓病の成人人口は1330万人もいます。日本人の8人に1人が慢性腎臓病です。これは日本の0-15歳の子供の数である1600万人を追い越しそうな勢いで増えております。

 

しかし、腎臓の専門医は日本で4000人くらいしかおりません。専門医がどんだけ頑張っても手が足りません。しかも腎臓は内科のマイナーな臓器であり、心臓の先生は心筋梗塞、脳の先生は脳梗塞などで忙しく腎臓の事なんて気にしてられません。

 

医者は基本的に感謝をされる事がやり甲斐になる仕事であり、今目の前で困っている患者さんに強く心動かされる傾向にあります。それに比べて、腎臓は、状態がひどくなるまで、具体的に100点満点で15点ぐらいになるまで症状が出ません。すると、結果的に多くの腎臓の疲れやSOS、特に慢性腎臓尿や蛋白尿は後回しにされがちです。

 

腎臓内科は、透析や腎炎、ミネラルバランスなど幅が広い領域であり、どれもやり甲斐があるため、比較的慢性腎臓病を専門にする先生も珍しく、日本にいる4000人の中でも慢性腎臓病を一番専門にする先生は限られます。

 

なので、慢性腎臓病を専門にしていく私は恐らく変わり者だと思いますが、日本の子供全員の人数と同じくらい慢性腎臓病の人がいる中で、こうやってブログを書いて情報提供していく事にすごく意味があると密かに思っています。

 

 

話はずれましたが、『なぜ医者は腎臓が60点以下になると騒ぎ始めるのか』について書いてみました。今度は蛋白尿をもっと詳しく書くか、心臓と腎臓の話か、IgA腎症について書こうと思います。

 

(非医療者に向けて書いているため、表現の正確性を崩して表現しております。医者が正確性を崩す事には後ろめたい気持ちがありますが、医者が正確性にこだわりすぎるあまり非医療者に大事な事を伝えられていない事実も痛感しており、必要悪と思っております。ご了承下さい。)

 

CKD診療ガイド2009がわかりやすいです。2012年が最新で2017年が来年ぐらいまでに発売予定とのことです。

https://www.jsn.or.jp/jsn_new/iryou/kaiin/free/primers/pdf/CKDguide2009.pdf